所信表明(令和2年第4回(12月)議会にて)

 市民の皆さんの御支援を賜り、引き続き、市政を担わせていただくこととなりましたので、市政を進めていく基本的な考えや主要な政策について述べさせていただきます。

 ドナルド・ケッテルは、行政のあり方を「自動販売機」に例えています。私たち市民は税金を払い、そしてサービスを期待する。期待したものが得られないと市政への参加と称し、自動販売機を揺すり始める。
 私は、行政と市民の関係に見られる、この待ち受けの姿勢を、共に創る共創的なものへと変えていくことが重要だと思っています。

 ひとりの男が大鍋に石を入れ、「石のスープ」を作り始めます。
 なんだか面白そうだと見ていた村人達が、次々に手持ちの食材を鍋に入れていくうちに、スープにどんどんうまみが増し、コクのある美味しいスープが出来上がります。村人達はみんなでスープを分かち合い、楽しい宴を堪能します。

 この話は、「共創することでより良いものが生まれる」ことを上手く伝えている民話ですが、本当に住みよいまちにするには、市民の皆さんが協力して創り上げていくことが大事です。
 行政の役割は、自動販売機の商品レパートリーを考えるのではありません。行政は、鍋に石と水を入れ、スープの用意をすること、つまり、市民の皆さんが生き生きと共創できるよう環境を整え、市民の声を反映する仕組みづくりをリードしていくことにあると考えています。

 どこにも負けない地域力のあるまちの実現に向け、「活力とやさしさ溢れる新しい阪南市」へこれからも邁進してまいります。

 さて、阪南市は、今、静かな有事といわれる人口減少・少子高齢化の流れの真只中にいます。社会保障人口問題研究所の推移から、2015年から2040年には人口が30%減少、後期高齢は50%増加、稼働年齢層は30%減少すると予想され、これまでに経験したことがない社会局面へ入っています。私は、阪南市の10年後を見据え、この局面の中で持続可能なまちを確立していくことが、市政を担うものとして課せられた使命と考えています。
 そのことからも、私は、持続可能な市政、地域での安定した生活を守るため、広域行政を推進していきます。

 これまで私たちは、右肩上がりの社会の中、成長目標を立て、多くのプランを進めてきましたが、今日のような社会情勢では、業務やストックの再編を繰り返すことが目標になりがちです。私は、市政が行う施策などの目標が近視眼的なものにならないように、これからの市政には、SDGs(持続可能な開発目標)のような大きな社会目標や理念のもと、10年後を見据えて進めていくことも必要であると考え、市政へ取り入れています。SDGs推進の良いところは、行政、市民、民間企業の異なるステークホルダー間で、10年後の2030年の社会に対して、共通目標を持ち、行動できるところにあります。
 この普遍的な共通目標のもと、静かなる有事の中、地域が置かれている新たな局面、地域の社会課題へ対処し、皆さんと共に幸せな暮らしをつくり上げていく取組ができれば幸いでございます。

 さて、第2期となる水野市政では、今述べさせていただきましたような私の基本的な理念から、市民は観客からプレイヤーへ、行政職員はプレイヤーからコーディネーターへ「自分たちの地域は自分たちで守り創る」を基本とし、地域力のあるまちを築いていくことができるよう取り組むとともに徹底した行財政構造改革に取り組んでいく所存でございます。

 次に、私が実現を目指す主要な政策について述べさせていただきます。

一.いのちと暮らしを守る地域共生社会の実現

 「まちなかサロン・カフェ」が、市内43か所と多くの地域にございます。
 この場所においては、最も身近な地域の拠点として、今では機能が充実し、コミュニティソーシャルワーカーとの相談、体操や学習会、買い物支援、病院への付き添いなど、誰も孤立せず、また、いつまでも暮らすことができる仕組みづくりが構築されつつあります。
 地域の課題には、暮らしや健康管理、防災減災、まちの活性化をはじめ、今の行政サービス・システムより地域が主体となって解決していく方がよい場合が多くございます。
 私は、「自分たちの地域は自分たちで守り創る」を基本とし、多様な主体で形成するまちづくり協議会組織の整備を目指し、(仮)まちづくり協議会条例を制定し、誰もが安心して暮らす、生き生きと豊かに暮らす仕組みをつくっていきたいと考えています。

二.行財政構造改革の取組

 人口減少・高齢化の影響により、年々、市財政運営が厳しくなっています。私は、この市政を率いる者として、引き続き、市長給与の20%カット、市長交際費・退職金はゼロとします。
 先に述べました「自分たちの地域は自分たちで守り創る」を基本としているところは、市税等の収入に伸びが見込めず、高齢化の進展により社会保障関連経費が大きく増加する中、行政でのサービス提供には限界があります。
 4年前の市長就任後、予算規模を縮小するなど取り組んできましたが、即効性のある財政改善策は限界にきていることから、市政運営を抜本的に見直す「阪南市行財政構造改革プラン」を策定しました。プランで、職員定員管理の見直し、人件費の抑制、ふるさと納税の戦略的展開、指定管理者制度の活用、はなてぃアクション、使用料の見直しなど数多く取り組んできています。このことにより、令和4年度決算時点で実質収支を14億円程度改善できる見込みですが、それでも、市財政実質収支の赤字が想定されます。
 行革を推進することは、私に課された使命でもあります。効果額をさらに積み上げるため、行財政構造改革プランの補強、見直しに取り組んでまいります。

三.地域経済・まちの活性化への取組~ちょうどよい田舎で働き、暮らし、楽しむ~

 私は、阪南市は関西国際空港や大都市おおさかの都市圏域にありながら、豊かな海山の自然に包まれた中で暮らしと働きのバランスが取れたまち、「ちょうどよい田舎」であると我がまちのことを誇りに思っております。
 ポストコロナを踏まえた新しい生活は、ご家族と過ごす時間が増え、また、テレワークの普及により職場へ通勤することが減り、家庭や市内で仕事や仕事以外でも平日の昼間帯を過ごすことが多くなってきます。阪南市は、皆さんのホームタウンとして10年後の社会を見据え、新しいまちづくりと地域の発展に取り組んでいきたいと考えています。
 今般は、次に掲げる取組を柱にまちづくりを進め、皆さんの生活の質的向上(QOL)と地域経済の発展・活性化、観光振興の推進、また、企業誘致についても推進していきます。

〇里山里海づくりプロジェクト

 地球温暖化対策にかかる環境保全活動、一次産業の振興、海山のフィールドを活用したスポーツ活動など推進し、阪南のライフスタイルを創っていきます。
 特に、地球温暖化対策への取組として、ブルーカーボンの認知度向上と海洋資源の保全活動を推進していきます。

〇シティプロモーション戦略

 リモートワークやワーケーションなど新しい日常から生まれる働き方、暮らし方を支援していきたいと考えています。若年層を中心として愛着と誇りを持てるようなまちとして、まちづくり企画・活動を推進していきます。

〇スマートシティ戦略

 行政手続、教育、健康管理などあらゆる分野へICT整備やAI活用により市民生活の質的向上を推進していきます。

〇ウォーカブルシティ戦略

 魅力的なウォーキングコースをまちなかに設けるなど、フレイル対策としても効果的な歩くことの習慣化を推進していきます。
 尾崎駅及び駅周辺整備など推進し、公共交通をシームレスに乗り継ぐことで無理なく歩くことで効果的に健康管理、フレイル対策を図っていくことを推進していきます。

四.子育て・教育の充実に向けて
 ~豊かな育ちと質の高い教育をすべての子どもたちへとどけたい!~

 子育てには、質の高い乳幼児の発達・ケアと就学前教育を受ける環境が必要です。子育て拠点の整備については、着実に進めています。4年前、一極集中による「総合こども館」計画を白紙撤回し、子育て拠点の再構築に取り組み、地域連携を踏まえた就学前教育、保育環境の整備を着実に進めてきています。安心して産み育てることができるまちとして取り組んでまいります。
 阪南市で育む子どもたちは、我が国の教育水準と比べ、より質の高い初等・中等教育を修了できるように教育環境を整えていき、豊かな人生設計ができるようにしていきたいと考えています。環境教育プログラムや自然体験の充実、英語教育の強化、ICT環境整備等取り組んでいきます。
 さらに、子どもたち一人一人の成長を守り、子どもたちの声を市政へ反映するため子どもの権利条例の制定に取り組みます。

五.健康・介護への取組

 本市は、新鮮な海産物や農産物など豊富な地場産品があり地産地消を推進しています。私は、市民の皆さんがヘルシーな食生活を楽しみながら、すべての市民が健康で生きがいを持って暮らす、地域で元気に暮らすことができる社会(=スマートウェルネスシティ)の実現を目指します。また、爽快な海山のアウトドアフィールドを活かし、スポーツや野外活動へ関心を持っていただけるように各種スポーツなどのイベントを企画するスポーツコミッションの設立などスポーツ振興にも力を入れていきたいと考えています。
 これからの健康・医療・介護の分野においては、データの利活用により様々なことが急速に発展していきますので、データヘルス改革により効果的な生活習慣病、健康増進、介護・認知症の各側面から対策に取り組んでいきます。

 安全・安心なまちづくり、ジェンダー平等・人権推進など市政が担っている各分野での事業・施策の充実により一層取り組んでまいります。
 さらに、2025大阪・関西万博の成功に向け、夢洲から続く大阪湾にある阪南市は、ポストコロナの社会において、自然と共生し、豊かに暮らすことができるまちとして役割を果たしていきたいと考えています。

来年、市制30周年の節目を迎えます。全ての人が互いに尊重され、認め合い、まちの担い手として生き生きと活躍し、自分らしく豊かに暮らしていくことができるよう「誰も一人ぼっちにしない、誰も排除しないまち」を市民の皆さんとともに創り上げていく筋道を確立してまいります。