戎さんと漁労習俗

 

    大阪の今宮戎神社で有名な「十日戎(とおかえびす)」は関西特有の行事です。七福神の一神である「えびす神」は、江戸時代になると天下の台所と称された大阪商人の信仰が厚く、商売繁盛の神として栄えましたが、今では家業繁栄、豊漁、家内安全の守護神であり「福の神」として広く信仰されています。また、右手に釣り竿を持ち、左手に鯛をかかえた姿で表されるように、「えびす神」は漁労習俗との関わりが深いとされています。

    阪南市尾崎には、もともと西出(にしで)・北出(きたで)・宮本と3つの浦(うら)があり、それぞれが漁の神様として戎さん(エベッサン)を祀(まつ)っていました。しかし、宮本では漁師がいなくなったということで、現在は西出・北出の2ヶ所で「戎講(えびすこう)」を営み、お祀りしています。

    西出の戎講は、兵庫県の西宮神社の戎さんを勧請(かんじょう)したもので、毎年1月2日に戎さんの掛軸(かけじく)を当屋(とうや)が背負って講員の家をまわり、そこでお神酒(みき)を頂き、最後は当屋の家で酒盛となりましたが、近年では、尾崎清水庵(おざきしみずあん)のお堂を利用するようになりました。当日の朝は、当屋他3人ほどで早出をしてお堂を清掃、戎さんに鯛・果物・野菜などをお供えし、焚火を熾(おこ)して準備します。講員が集まったところで、この年の当屋以外が籤引(くじびき)をして、次年の当屋を決めます。その後、昨年のお札や提灯(ちょうちん)などを燃やし、お堂に入って戎さんの掛軸を一同で拝み、最後はご馳走(ちそう)を囲んで歓談するそうです。

 

    浦:漁村

    勧請:仏神の霊や像を寺社に新たに迎えること。

    当家:世話役

西出の戎社

西出の戎社

北出の戎社

北出の戎社

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