箱作の加茂神社に祀られている2柱の祭神のうち、前回は「タマヨリヒメノミコト」について触れましたが、今回はもう1柱の「タカオカミ」がどのような伝承を持っているのかを探ってみます。
タカオカミとはあまり聞き慣れない神名ですが、古い文献では唯一『日本書紀』にタカオカミが龍神であるという記述があります。タカオカミは京都の貴船神社に雨を降らせる神として祀られており、かつて山中新田(現在の阪南市南山中)にも貴船神社があり、このタカオカミを移し祀られたものと言われています(この神社は明治44(1911)年に田山稲荷神社に移されたため現存しません)。
箱作のタカオカミもおそらく京都の貴船神社から移し祀られたものと思われますが、大正11(1922)年に発行された『大阪府全志』(地誌)では、タマヨリヒメノミコトを祀る以前からこの社の主なる祭神であり、現在箱作小学校・給食センターのある一帯に赤掛山という字名があったこと、そのふもとの鳥居本というところに鳥居の沓石があって、里人はそこがタカオカミの古い社跡だとして、大切にしていると書かれています。北面に海を望み、眺めは絶景でしたが、前面の海上を通行する船がたびたび波風に進行を妨げられるのは、その場所が神意にかなわぬものとして、社を現在の地に移したという言い伝えがあります。
現在の本殿は前回にも述べたとおり、桃山時代の様式をそなえており、本殿左側にある石灯籠は慶長15(1610)年の銘が記されています。和泉砂岩製の四角形を基調にした落ちついたまとまりのあるもので石造美術品としても価値のあるものです。
慶長15年銘の石燈籠