旧尾崎村役場庁舎を彩るタイル

    旧尾崎村役場庁舎は、昭和4(1929)年に建設され、当時の公共施設としては近代的なものでした。この建物がたどった歴史については、『文化財あれこれ』「尾崎村役場」で紹介していますので、今回は建物に焦点をあててみます。

    大正12(1923)年の関東大震災(かんとうだいしんさい)を契機に、建築物は耐火(たいか)に加えて耐震(たいしん)性も重視されるようになり、従来のレンガ造りから鉄筋コンクリート造りへ移り変わりました。この変化に伴って建物の外壁はタイルで装飾したものが流行し、当庁舎の外壁も正面及び側面に黄褐色(おうかっしょく)のスクラッチタイルを採用しています。スクラッチとは引っ掻(か)くという意味で、表面に溝を無数に入れています。掻き取り痕の粘土塊(ねんどかい)が残るこのタイルは一見粗雑に見えますが、全体的には屋根の庇(ひさし)の下や玄関部分に施された石材風の装飾と調和してきらびやかではないものの温かみを感じさせ、当時の流行を物語っています。

    スクラッチタイルは、関東大震災以前に設計者のフランク・ロイド・ライトが帝国(ていこく)ホテル旧本館に用いるために愛知県常滑(とこなめ)市で生産をはじめました。

    以後、昭和3(1928)年竣工の首相官邸等の公共施設から庶民的な建築物に至るまで幅広く用いられ、約10年間にわたり流行しました。

    旧尾崎村役場庁舎は尾崎町、南海町、阪南町役場を経て、平成28(2016)年度まで尾崎住民センターとして使われていましたが、平成30(2018)年度をもって取り壊されました。

尾崎村役場の庁舎

旧尾崎村役場

タイルと石材

石材風装飾と調和する温かみのある外観

スクラッチタイル

二丁掛(にちょうが)けと言われる22.7cm×6.0cmのスクラッチタイル

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