浄土宗の開祖 法然上人は「阿弥陀仏の本願を信じ、南無阿弥陀仏と唱えれば、極楽浄土に往生できる」と説きました。この教えは地方それぞれの風土や民情に合せ、主に念仏講という組織を通じて全国に広がりました。
自然田に所在する瑞宝寺の鉦講は、こうした念仏講の一種で、その始まりは明らかではありませんが、宝永7(1710)年に記された史料が残っていることから、このころより行われていたと考えられます。
同寺の鉦講には、双盤念仏と伏鉦念仏の2つがあります。双盤念仏は春秋の彼岸や盂蘭盆、地蔵盆の時に、伏鉦念仏はお通夜の時に行われるもので、どちらも4人1組で鉦を打ちながら念仏を唱えます。構成員は同寺の檀家で、原則として一子相伝の家系を守り、念仏の唱え方は口伝でのみ伝授されてきました。
このように、瑞宝寺の鉦講はその形態がほぼ昔のままに継承されていることから、平成15(2003)年2月、阪南市指定無形民俗文化財に指定され、平成20(2008)年1月には、大阪府の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財(大阪府選択無形民俗文化財)に選ばれました。
阪南市内には瑞宝寺以外にも黒田寺、祐道寺、宗福寺、西光寺に鉦講が残っており、これらも平成21(2009)年1月に、大阪府選択無形民俗文化財に選ばれました。
※記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財(選択無形民俗文化財)とは
無形民俗文化財(衣食住、生業、信仰、年中行事などに関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術など)のうち、重要無形民俗文化財以外で、特に記録や保存、公開が必要と考えられるもので、それに関して経費の一部を公費で補助できる制度。
双盤念仏
伏鉦念仏
元文3(1738)年銘の双盤鉦