箱作・飯の峯畑遺跡から出土した糸印

 

    糸印(いといん)は銅で鋳造(ちゅうぞう)した印章(いんしょう)で、 鈕(ちゅう)は人物や動物、器物などをかたどっています。印面は円や方形、五角形や八角形など様々で、文字は篆書体(てんしょたい)に似ていますが、印文は解読できないものがほとんどです。

    用途は十分に解明(かいめい)されてはいませんが、室町時代末期から江戸時代初期(約450年から420年)にかけ、明(みん)から輸入した生糸(きいと)に添えられ、この印を押したものを取引証として返送したという説が有力です。

    風雅(ふうが)な趣(おもむき)があるためコレクターも多く、武将や文人などの間でも私印として用いられました。豊臣秀吉(とよとみひでよし)、石田三成(いしだみつなり)、毛利元就(もうりもとなり)、丸山応挙(まるやまおうきょ)らのものが特に有名です。

    阪南市箱作(はこつくり)の丘陵部に位置する飯ノ峯畑(いいのみねばた)遺跡で出土した糸印は、高さが2.7cmで唐獅子(からじし)の鈕がついています。印面は直径2.85cmの円形で、文字は解読できませんが、鈕の形は異なるものの、同じ印面のものが他にも存在することから、個人名とは考えられません。糸印のほとんどは伝世品(でんせいひん)のため発掘調査で見つかることは珍しいのですが、これは大変残存状態の良いものです。

 

    鈕:紐(ひも)を通すためのつまみ。

    篆書体:印鑑(いんかん)や碑銘(ひめい)などによく使われる文字。

    明:中国の統一王朝名。1368~1644年。

    伝世品:古くから愛玩(あいがん)されて世に伝わってきたもの。

唐獅子の鈕

唐獅子の鈕

 

解読できない印面

解読できない印面

この記事に関するお問い合わせ先

生涯学習部 生涯学習推進室 生涯学習推進担当

〒599-0292
大阪府阪南市尾崎町35-1
電話:072-489-4542
Eメール:s-gakusyuu@city.hannan.lg.jp