文化審議会は、6月20日に開催された同審議会文化財分科会の審議・決議を経て、自然田所在の南氏庭園を登録記念物(名勝地関係)に新登録すべく文部科学大臣に答申しました。
登録文化財制度は、身近にある文化財を積極的に活用しながら、ゆるやかに守るために設けられた文化財保護法の指定制度を補うための制度で、平成8年に建造物の登録制度が発足し、平成17年の法改正により美術工芸品や有形民俗文化財記念物(史跡、名勝、天然記念物)についても登録制度がつくられ、大阪府下での登録記念物(名勝地関係)は、豊中市の西山氏庭園、吹田市旧西尾氏庭園、旧中西氏庭園に次ぐ4例目となります。
南氏庭園は、阪南市自然田に所在する旧家の庭園です。南氏は江戸時代に庄屋を務めた豪農で、明治時代は阪南市域及び岬町域の連合戸長を務めました。敷地は東西約70m、南北約50mに及び、主屋、表門、土塀、蔵など7件は平成17年12月5日に登録有形文化財(建造物)に登録されています。居住区域には、明治22年(1889)頃に建てられた主屋を中心に、玄関、座敷棟が建ち、庭園は座敷棟南の主庭、北の露地庭を中心としています。特に主庭は築山、当地で産出する和泉砂岩の滝組石などからなる枯山水庭園で、築造時から手を加えつつ、現在の形態になりました。また、敷地西側に現存する広大な垣内は、かって大阪近郊の豪農によく見られた日常生活に関わる多目的な作業空間で、開発に伴い、それらの多くが消滅しました。敷地全体には、樹齢約400年のヤマモモなどの古木も残されています。
南家の住宅及び庭園は近世以降の豪農屋敷の姿と格式を今もとどめており、庭園は近代における泉南地方の有力農家の作庭を考える上で重要な事例であると考えられ、建造物と庭園を一体として保存する意義は極めて大きいと考えられます。
※当庭園は個人の居住スペースの為、通常一般公開は行なっておりません。