貝掛の松

 

    貝掛(かいかけ)の浜街道沿いに、縦2.45m、横1.35mの『貝懸枩碑(かいかけまつのひ)』という石碑があります。

    その内容は以下のもので、全て漢字で書かれています。

    「この地にかつて松が生えており、その高さは10m、太さ6m、曲がりくねった枝は四方に笠を伏せたような形で広がる樹齢500年の大木でした。この地は水利が悪くて、松の下で雨乞(あまご)いの行事を行ったり、航海の標識にしたりして、村人全員でこの松を大事にしていました。伝えられるに、昔、盗人(ぬすっと)が神於寺(こうのじ)にあった宝貝を盗み、逃げてここまで来ると、貝が鳴り出して止まなくなりました。盗人は大変恐れ、貝をこの松に掛けて逃げました。それゆえに村の名前になったという伝承があります。聞くところによると、松は明治29(1896)年8月の暴風で倒れ、村の主だった老人たちは、幼い松を植え、松の由緒(ゆいしょ)をこの碑に刻みました。私(碑文の作者)は松が枯れてもその恵みを後の世に伝えるという村人の思いに大変感動したので、この碑文を書きました。」

    最後にこの文は明治30(1897)年9月、播磨国(はりまのくに)の近藤美という人によって書かれたと記されています。

    この松のことは江戸時代の絵図にも記載されており、碑文のとおり著名であったことが伺えます。

    松と石碑は海岸近くに立っていて、昭和の初め頃に現在の地に移転されたそうですが、風化が激しくなったため、平成9(1997)年の春、地元の人々によって建て替えられ大切にされています。

 

    浜街道:別名孝子越(きょうしごえ)街道

    神於寺:神於山(岸和田市南麓)に位置する天台宗寺院

    播磨国:現在の兵庫県南部

絵図

天保7(1836)年 山中家文書

建替前の石碑(1996年撮影)

新碑

現在の石碑

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